慢性疼痛疾患における前頭前野の機能低下

こんばんわ!!横須賀うみかぜカイロのたまだです。今回はDLPFCに関する論文の紹介です。

「慢性疼痛疾患における前頭前野の機能低下とリハビリテーション介入の可能性」pain rehabilitation 第2巻1号(2012年)

近年リハビリテーション医学の分野では、脳機能イメージング研究がさかんに行われており、少し前の教科書には書いていないような情報がたくさん報告されています。

今回ご紹介の論文では、慢性疼痛患者に共通する背外側前頭前野(DLPFC)の機能低下が痛みの調整機構を破綻させ痛みを増大させている可能性の示唆と思考に関するDLPFCの機能改善が痛みを改善させるという研究報告です。

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「NHK腰痛治療革命から」

前頭前野はうつ治療でも注目を浴びていた部分ですが、慢性疾患患者でも注意・記憶・意志決定などの思考の異常が報告されています。特に思考の問題のある慢性疼痛患者は背外側前頭前野(DLPFC)の機能低下が指摘されています。

さらに前頭前野は解剖学的に下降性疼痛抑制系とのつながりがあります。

DLPFCーACC(前部帯状回)ーPAG(中脳中心灰白質)ーRVM(延髄)ー後角というつながりです。

つまり、DLPPFCが機能低下すると、下降性疼痛抑制系が機能せず、痛みの抑制機能が正常に働かなくなります。

ではどうすれば前頭前野の機能を改善させることができるかというと、前頭前野を活性化させるといえば、昔流行った脳トレや一桁計算、音読などが挙げられますが、今回の報告では、外側前頭前野を活性化させるリハビリとして、「注意による鎮痛」と「痛みの再解釈による鎮痛」があげられていました。

「注意による鎮痛」は痛み刺激と認知課題(作業)を同時に与えることで痛みから注意がそれ、痛みに関連する領域の活動が減少するということです。

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「ブレインブックみえる脳から」

痛みに注意(フォーカス)している方は帯状回が興奮状態にあります。そこで、痛みから意識をそらせる課題を行うことで、帯状回の活動が低下し、それに伴い痛みの軽減が見られます。

もう一つの方法は「痛みの再解釈による鎮痛」です。

ただ単に注意をそらすのではなく、情動刺激に対して、どのように「意味づける」かということです。

本論文では海外の研究結果を紹介していましたが、たとえば、与えられる痛み刺激を自分でボタンを押すことで止めることができる条件と他者やコンピューターによってのみ刺激が止められる条件で比較すると、【同じ痛み刺激にも関わらず、自分で止められる条件のほうが主観的な痛みの強度が低く、前頭前野の活動が増大していた】ということです。

これは不快な痛みを「自分でコントロールできる」ものと再解釈することで前頭前野が活性化し下降性疼痛抑制系が機能していることがうかがえます。

また違う研究報告では、8日間の繰り返される痛み刺激に対して、
「痛みの感覚が減少していく」と説明を受けたグループと「痛みの感覚がだんだん増していく」と説明をうけたグループでは、同じ刺激にも関わらず、【だんだん痛みが減少していくと説明をうけたグループではVASが有意に減少したが、痛みが増していくと説明をうけたグループではVASの減少がみられなかった】とのこと。

また不快な情報(写真)をポジティブに再解釈(イメージ)すると前頭前野が活性化し、さらに側坐核の働きが促進し扁桃体に対しては抑制に働くことがわかっている。

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このように痛みに対してのネガティブな思考を変えることが前頭前野と下降性疼痛抑制系の機能を正常化させ、痛みを軽減させる可能性が示唆されています。

このような研究報告からもわかるように痛みのメカニズムの話やポジティブな正しい情報をお伝えするということ自体が治療の一環になるのです。

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